細胞コレステロール搬出にかかわるアポリポタンパク質レセプターの同定と解析のため、マウス由来マクロファージ様細胞株RAW264を用いてアポリポタンパク質AI(アポAI)の結合能とアポAIの結合に伴うコレステロール放出を調べて以下の成果を得た。 1)^<125>IラベルしたアポAIを用いた結合実験から、無処理RAW264細胞には非特異的なアポAI結合しか認められないことがわかった。しかし300μMdBcAMPならびに10μM forskolin処理24時間後には特異的なアポAI結合部位が出現した。この誘導には細胞内Aキナーゼの活性化が関与しているものと考えられるが、転写、翻訳、細胞内アポAIレセプターの表面への移行のどの段階が活性化されて起きる現象かは現在解析中である。 2)RAW264細胞に種々の濃度でアポAIを投与すると、無処理RAW264細胞では培養液中のコレステロール量はほとんど変化しなかった。一方、300μMdBcAMPで24時間処理したRAW264細胞では細胞コレステロールの放出に伴う培養液中コレステロール量の増加が見られた。この効果はアポAIの濃度の上昇に伴って増強し、約15mg/mlでプラトーを示した。また、リン脂質放出量もAキナーゼ活性化条件下でアポAI濃度依存性に増加することを確認した。 以上の実験結果より、RAW264細胞の表面には細胞内Aキナーゼの活性化に伴って特異的なアポAI結合部位が出現し、アポAIに反応してコレステロール放出ができるようになることが明らかになった。
|