心筋細胞においてAngiotensinII(AngII)、Endothelin-1(ET-1)によりPyk2が如何なる経路で活性化され、さらに電位依存性KチャネルKv1.2の機能調節に関与しているかを明らかにするため以下の実験を行った。ラット培養心筋細胞をAngII.ET-1により刺激した。対照としてBradykinin(1μM)、PMA(5μM)、A23187(10μM)、を使用した。(1)Pyk2を免疫沈降しチロシンリン酸化を観察した。(2)ET-1によるPyk2リン酸化に対する百日咳毒素(PTX)、chelerythrin(PKC阻害薬)、BAPTA-AM、cytochalasinD(Actin重合阻害剤)、AG1478(EGF受容体阻害薬)、radicicol(Src阻害薬)の抑制効果を観察した。(3)Kv1.2を免疫沈降しチロシンリン酸化を観察した。(4)共免疫沈降によりPyk2とKv1.2の結合を観察した。(5)Pyk2免疫沈降物によるGST-Kv1.2のリン酸化を観察した。その結果、(1)AngII、ET-1によりPyk2は30秒後よりリン酸化が認められ2分後に最大となった。Pyk2リン酸化はBradykinin.PMAで認められたが、KCl、A23187では認めなかった。(2)Pyk2リン酸化はPTX、AG1478、radicicolでは抑制されずchelerythrin、BAPTA-AM、cytochalasinDにより完全に抑制された。(3)Kv1.2リン酸化は刺激後30秒より増強し2分で最大となった。このリン酸化はcytochalasinDにより有意に抑制された。(4)Kv1.2とPyk2の会合は刺激後増強した。(5)in vitroでのPyk2によるKv1.2のリン酸化を確認した。以上より、心筋細胞においてAngII、ET-1の刺激によりGq、PKCを介し、caおよび細胞骨格依存性にPyk2が活性化された。また、活性化Pyk2はKv1.2と会合し、Kv1.2を直接リン酸化することが証明された。
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