研究概要 |
最近の臨床報告では薬剤起因性のQT延長及びTorsades de pointsでは女性が危険因子の一つとされている。この女性の頻度の増加の理由については明らかではないが、臨床例では閉経前女性により多く薬剤因性QT延長がみられることから、Estrogenの関与が推察される。また近年、骨粗鬆症治療や閉経後女性の冠動脈疾患2次予防の目的などでestrogen剤が用いられるようになり、今後のestrogenの臨床利用は増加する傾向にある。しかしながらestrogenの心臓におよぼす電気生理学的影響は十分に解明されていない。そこで今回我々は、estrogenの心筋Ion channelに及ぼす影響を検討する。特にQT延長との関連から、遅延整流外向きカリウム電流に対するestrogenの効果を中心として研究をすすめる。 モルモットの単離心室筋細胞を用いた検討では、Estradiol 10mmol/LはIkの遅い活性化を有する成分であるIksが主に発現する5000msecの脱分極パルスにより誘発されるIk.tail currentを有意に抑制した.(Current density using +50 mV depolarization:Control 7.1±2.8vs.Estrsdiol 5.1±2.0pA/pF,p<0.05,n=10).一方Estradiol 1mmol/Lは,250msecの脱分極パルスにより誘発されたIk.tail currentを,-10mVから+10mVの範囲で有意に増加した.(Current density at 0 mV depolarization:Control 0.68±0.24 vs.Estrsdiol 0.92±0.24pA/pF,p<0.05,n=8),しかしながらEstradiol 10μmol/Lでは,Ik電流には影響を及ぼさなかった. 上記の結果が示すとおり,Estradiolは,Ik電流に対して急性の効果を示すことが明らかとなった.
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