研究目的:単離心筋細胞、摘出灌流心、In vivoのレベルで心不全におけるリモデリングと機能不全との関係について経時的に検討する。 方法:1.実験モデル 生後3.6.9.12.15.18.21.24月齢の雌性自然発症心不全ラット(SHHF/Mcc-cpラット)を用いた。2.心エコー ペントバルビタールで麻酔後、7.5MHzプローブを使用し収縮期拡張期の左室内経、前壁厚、後壁厚を測定、収縮率を計算した。3.心カテーテル 右総頚動脈よりミラーカテーテルを左室内に挿入し左室圧、dp/dtを測定した。4.摘出灌流心 心臓を摘出後working heart法にて灌流した後、心拍出量、左室圧、dp/dtを測定した。次に機械的に心後負荷を順次増加し上記指標を測定、負荷時の心臓能の変化を調べた。5.単離心筋細胞の作製 上記ラット摘出心をcollagenaseを含むJoklik's madiaで灌流した後、左心室筋を切離し、単離心筋細胞を作製した。a)細胞外Ca濃度1.0mMの条件下で灌流し、0.5Hzのfield stimulationを加え、細胞収縮を発生させた。光学的方法(edge-detection system)により単離心筋細胞の%収縮率、%弛緩率、収縮速度、弛緩速度を測定した。b)単離心筋細胞を1.5%glutaraldehydeで固定した後Computer image analyzerにより、組織学的に心筋細胞の長径を測定するとともに、Coulter Channelyzerを使用し平均細胞体積を測定した。平均細胞体積/平均細胞長より平均断面積を算出、 さらに平均断面積より平均細胞径を算出した。平均細胞体積、細胞長、断面積、心筋細胞長/平均細胞径を指標とし、心筋細胞のリモデリングについて評価した。 結果、結論:1.3ヶ月齢のSHHFラットでは、すでに心筋細胞の平坦化と断面積の増大が見られた。6ヶ月齢以後は心筋細胞の断面積は変化せずに平担化は持続した。さらに12ヶ月齢からは心筋細胞長の増大が見られた。以上の結果より心不全に関連した心筋細胞リモデリングは3ヶ月齢より始まっていることが判明した。2.単離心筋細胞の収縮弛緩能は12ヶ月齢より低下した。摘出灌流心における心拍出量、左室圧、dp/dt等の心臓能は18ヶ月齢より低下を認めた。心エコーによる収縮率を計算する。ミラーカテーテルによる左室圧、dp/dtの低下は24ヶ月齢より認められた。 3.以上の結果より、圧負荷による肥大から心不全に進行する際に、心筋細胞にリモデリングが最初におこり、次に細胞レベルでの収縮、拡張不全が起こり、さらに摘出灌流心、In vivoのレベルの順で機能不全が出現することが判明した。
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