本研究の目的は、赤芽球系の分化増殖因子であるエリスロポイエチンと昇圧物質のエンドセリンが生体内において昇圧系を構成していることを明らかにし、その機序を分子生物学的に解明することである。 我々は、血管内皮細胞がエリスロポイエチンに反応し、エンドセリンの生成が増加する事を示すため.ヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞の培養系を使用して研究を進めた。培養液中にヒト組み替えエリスロポイエチンを添加した後細胞よりRNAを抽出し、ノーザンプロットによりエンドセリン遺伝子の発現について検討した。その結果、エリスロポイエチン刺激から3時間後よりエンドセリンの発現は増加し6〜8時間後に最高値をとる事が解った。 次に、エンドセリン遺伝子の発現がどの様な様序でエリスロポイエチンにより調整されているかを解明するために、エンドセリン遺伝子の転写調節領域を含む30kbのDNAを用いてデリーションアッセイを行った。しかし様々な工夫を凝らしてもヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞に対する遺伝子導入は困難であり、エリスロポイエチン反応領域を同定することができなかった。また遺伝子導入に良く耐えるウシ大動脈由来血菅内皮細胞はエリスロポイエチンに対する反応が乏しく実験材料として不適当であった。現在、他の細胞として増殖性の強い胎児由来の血管内皮細胞瘍や血管種由来の細胞の使用を検討中である。
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