研究概要 |
エストロゲンの抗動脈硬化作用の一つとしてin vitroではヒト血管内皮細胞やラット大動脈平滑筋細胞においてエストロゲンがプロスタサイクリン合成を増加させることが知られている。しかし、エストロゲンがプロスタサイクリン合成を亢進させる際のシクロオキシゲナーゼを誘導するメカニズムについては未だ明らかではない。本研究では培養ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を用い、COXのエストロゲンによる誘導を調べた。1.アスピリン酸1mM処理後、1%serum、1%serum+E_210^<-8>M+β-cyclodexitrin0.5nM、5%serum+TPA100ng/mlで各々3h、6h、24h.48h培養後、アラキドン酸3μg/ml±NS-398 10^<-7>M添加し培養液の6-ketoPGF_1αをERISA法にて測定した。TPA処理では6h後に6-ketoPGF_1α産生はpeakとなり急激に低下、48hではほとんど産土されなかったが、serumおよびE2処理では6-ketoPGF_1α産生は時間経過とともに増加した。また6-ketoPGF_1α産生はTPA、E_2ともにCOX-2のinhibitorであるNS-398で3hは部分的に抑制されたが、48hは抑制されなかった。2.Serum、TPA、E_2でHUVECを同様に処理後、COX-2mRNA、COX-1mRNAの変動をcompetitiveRT-PCRにて検討した。COX-2mRNAはserum処理細胞では変動が認められなかったが、TPA処理細胞では3hをpeakに徐々にその発現が減少した。一方E_2では二峰性の発現の増加が認められ、そのpeakは3h>24hであった。すなわちエストロゲン処理により時間経過で血管内皮におけるプロスタサイクリン合成は増加していたにもかかわらず、COX-2mRNAの発現は増加していなかった。COX-1mRNAは3hではほとんど発現せず、24h,48hにて発現された。以上の結果より血管内皮細胞におけるエストロゲンのプロスタサイクリン合成は初期には誘導型であるCOX-2が主に関与し、時間経過とともにCOX-1が主な役割を占めるようになることが明らかとなった。
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