突然死の原因として不整脈が有力視されているが、その発生・停止には、興奮伝播の異常なre-entryが最も影響していることが分かってきた。更に、このre-entryの発生は心筋各部の不応期分布及び、通電により不応期が延長・短縮する現象によることも分かってきた。以上のことから、不整脈発生・停止時における不応期の分布の計測・解析が不整脈解析において重要であるといえる。 本研究では、不応期の2次元的分布の計測・解析が可能なシステムの開発を目的とし、既に開発した心表面から不応期の計測が可能な装置の改良及び、解析ツールの開発を行う。本年度は平成8年度文部省科学研究費の補助により製作した心表面の16点の電位を計測する装置を基に、48点計測用のModified Bipolar電極(関電極の近傍に不関電極を置く双極電極)並びに、計測用アンプを製作した。電極形状は、拍動中の心臓の動きへの追従が可能なものとした。また計測された波形を基に、不応期分布の変化の解析が可能なツールの開発を行った。解析ツールは計測した波形及び、不応期分布の動的な変化の表示が可能なソフトウェアである。 本年度の研究で開発したシステムを動物実験に応用し、その有効性を検討した。実験は灌流下の動物の心臓にペーシングした後、期外刺激を与え不整脈を誘発し、その前後の変化を計測した。その結果、48の計測点のほとんどで電位計測が可能となった。また、不応期の動的な変化を表示が可能となり、不応期の変化を視覚的に捉えることが容易となった。
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