1. 目的:突然死の原因として不整脈が有力視されているが、その発生・停止には、興奮伝播の異常なre-entryが最も影響していることが分かってきた。更に、このre-entryの発生は心筋各部の不応期分布及び、通電により不応期が延長・短縮する現象によることも分かってきた。以上のことから、不応期発生・停止時における不応期分布の計測・解析が不整脈解析において重要であるといえる。本研究では、不応期の2次元的分布の計測・解析が可能なシステムの開発を目的とし、既に開発した心表面から不応期の計測が可能な装置の改良、及び解析ツールの開発を行うこととした。 2. 方法:本年度は、昨年度製作した心表面の48点の電位を計測する装置を基に、64点計測用のModified Bipola電極(関電極近傍に不関電極を置く双極電極)並びに、計測用アンプを製作した。電極は、拍動中の心臓の動きへの追従が可能なものと、心臓の組織の一部を切り出した標本上での電位計測が可能な2種の形状のものを試作した。また、パターン認識手法を用い、計測波形の自動認識を行うソフトウエアの試作を行った。 3. 結果:灌流を行った心臓にペーシングをした後、期外刺激を与え不整脈を誘発し、その前後の変化を本年度の研究で開発した計測装置により計測した。その結果、開発した装置を用い64点における電位並びに不応期の計測が可能となった。また不応期分布解析の結果、ペーシングによる波形では刺激局所周辺では120〜l40msと短いが、その辺遠部では160〜180msと長かった。期外刺激の波形では刺激局所周辺では80〜110msど短縮が見られ、辺遠部に向かうにつれ60〜75msとさらに短縮し、期外刺激により不応期分布が著しく変化することが分かった。
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