目的:心筋梗塞症急性期より自律神経機能を経時的に評価し、その自然経過や心機能障害との関係を包括的に明かにすること. 対象、方法:初回心筋梗塞症15例を対象に発症第5、9、14、35、90病日に安静臥位にて圧受容体機能(動脈圧受容体:フェニレフリン法、心肺圧受容体:下肢陰圧負荷法)、血中ノルアドレナリン、レニン、アンギオテンシンII、バソプレッシンを測定した. 結果:心筋梗塞症発症後、動脈圧受容体は発症後第5、9、14病日は5.2→7.6→10.3msec/mmHgと有意な増加を認めたが、第14病日からは変化しなかった.心肺圧受容体は発症後第5、9、14、35病日まで18→32→45→60%と有意な増加を認めたが、第35病日からは変化を認めなかった.神経液性因子は血中ノルアドレナリンは発症後387→354→289pg/mlと有意に減少、血中レニン、アンギオテンシンII、バソプレッシンは発症後も不変であった. 考案:急性心筋梗塞症発症後の交感神経活性は心機能の重症度を反映し、予後を推定する重要な因子である.本研究により心筋梗塞発症直後より圧受容体機能は障害され、その回復と共に交感神経活性の減少を認めたことより、急性心筋梗塞症の交感神経活動に自律神経機能の関与が示唆された. 平成10年度にはさらに症例を重ねながら心筋梗塞症回復期の運動療法が自律神経機能に及ぼす影響について検討していく予定である.
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