研究概要 |
N^G,N^G-dimethyl-arginine(asymmetrical dimethyl arginine:ADMA)などのL-arginine analogueが生体内で内因性に合成される事が知られている。我々は既に生体内での一酸化窒素NO合成阻害を通じてADMAが食塩感受性高血圧発症に関与する可能性を示したがその調節系については未だ明らかではない。主に腎臓に存在するdimethylargininase(DMAse)はin vivoにおけるADMAの重要な調節系として機能していることが示唆されている。そこで、今回我々は自然発症高血圧ラット(SHR)とDahl食塩感受性ラット(DS)のL-arginine-NO-ADMAの動態を評価しこれに対する腎でのADMA調節系の関与について検討した。7-8週齢のSHR及びその正常高血圧コントロールであるWKY・0.3%低食塩食及び8%高食塩食下のDS及び食塩抵抗性ラット(DR)に対し、動脈圧測定と排尿・採血を行ない、ADMA及びNO産生の指標として硝酸・亜硝酸(NOx)を測定した。腎組織中のDMAseに関する検討はモノクローナル抗体を用いたwestern blot analysisと免疫組織染色により行った。高食塩下のDSで有意なADMA尿中排泄上昇を認め(p<.005)、これは血圧値と有意に正相関した(r=.52,p<.05)。一方、SHRにおけるADMA尿中排泄はむしろWKYより低く(p<.001)、血圧値とは逆相関した(r=.75,p<.05)。NOx尿中排泄は、高食塩下のDSで対照に較べ低く、SHRではWKYより高値を示した。腎組織中のDMAse含量及び組織分布についてはDS,DR,SHR,WKY間で有意な差はみられなかった。以上の結果から、内因性NO合成阻害物質は食塩感受性高血圧において血圧上昇の結果としてでなく発症に関わる可能性が示唆された。これには腎ADMA調節系の関与は乏しいと思われた。
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