本年度は後負荷の動的性質を忠実に再現できるインピーダンス負荷装置の開発を行った。当初、イヌの摘出潅流心にリニアポンプを接続する負荷装置の開発を試みた。しかし慣性の大きな負荷を自在に制御できる補償を行うことが困難であったこと、実験動物として小動物の使用頻度が増加していることからラットの生体位心での装置の開発に変更した。麻酔・開胸ラットの大動脈圧(カテ先血圧計)と血流(トランジット血流計)を1kHzで量子化した。大動脈には左頚動脈を介してリニアポンプを接続し、目標のインピーダンスの逆数(アドミタンス)を実測の血圧波形に適応することにより目標インピーダンスに駆出したときの血流を推定した。つぎに目標血流と実測血流の差を計算し、それに補正係数を乗じたもの(差の一部)をリニアポンプで補正した。補正血流の計算は実時間で行った。補正係数が大きいと安定な目標血流に収束しなかった。血流の差を補正することにより血圧波形も変化するため、インピーダンスの安定な負荷に達するまでには補正を行いながら反復計算をする必要があった。接続するリニアポンプのアナグロ的およびディジタル的な補償により目標インピーダンスを負荷することが可能になった。生体のインピーダンスに対し特性インピーダンスを50〜200%、コンプライアンスを25〜200%の範囲で変えることができた。66回の制御において、目標と実測の瞬時血流間の相関係数(2乗)は0.991±0.004、平均2乗誤差は1.16±0.56%であった。
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