ホロカルボキシラーゼ合成酵素(HCS)は、ビタミンAの一種であるビオチンを種々のカルボキシラーゼに取り込ませる反応を触媒する酵素である。今回は、このHCS cDNAのコードするタンパク質に対する特異抗体を作製し、ヒトにおけるHCSタンパク質を同定した。まず、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにより胎盤サイトゾル画分からHCSの部分精製を行った。ここでHCS活性のあるフラクションを大腸菌にて発現させたHCSの部分タンパク質に対する抗体を用いてウエスタンブロッティングを行ったところ、約86、82及び76KDaにバンドが検出された。また、HCS発現ベクターを導入したHCS欠損患者線維芽細胞でも同様に3種のHCSタンパク質が検出された。HCSタンパク質のアミノ酸配列よりMet残基は1、7及び58番目に位置することから、Metl-Lys15あるいはMet58-Glu72に対するペプチド抗体を作製し、それぞれのHCS分子との交差反応性を解析した。その結果、抗Met58-Glu72抗体は3種すべてのHCS分子を認識したの対し、抗Met1-Lys15抗体は86及び82KDaのHCS分子のみを認識した。以上の結果より、ヒト胎盤サイトゾル画分におけるHCS分子は、その分子量の大きさから3種存在し、それらは翻訳開始点の相違に基づく産物であることが考えられた。現在は、今回確立した同様の方法でミトコンドリアHCSの同定を試みている。
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