日本人症例解析 我々は、脳症様のエピソードで発症し尿有機酸分析による化学診断と、白血球の酵素活性測定による酵素診断により確定診断を受け日本小児科学会雑誌に発表されている姉妹例の患者由来培養皮膚繊維芽細胞を、島根医科大学医学部小児科山口清次教授より供与された。 この培養皮膚繊維芽細胞を培養し増殖させた後、RNAとDNAを分離した。このようにして得られたRNAを逆転写酵素によりcDNA化した後PCRを行った(RT-PCR)。この際にGCDH遺伝子の蛋白翻訳領域を4分割し互いにオーバーラップするように増幅した。この得られた4つのPCR産物をダイナビーズにより一本鎖にして塩基配列の決定を行った。結果はエクソン8内にS305L変異及びエクソン9内にM339V変異を検出した。これらの変異をゲノムDNA上で確認するためにエクソン8、エクソン9を含むようにイントロン内にプライマーを設計しPCRで増幅した。S305L変異はドットブロットによるASOハイブリダイゼイションで、またM339V変異は得られたPCR産物を正常アレルならNla IIIで消化され、変異アレルであればBsp1286 1で消化されることでゲノム上に両方の変異が存在することを確認した。また同じ方法によりS305L母親より、M339Vは父親より由来していることが確認された。 これにより確認されたS305L変異は軽症のパレスチナのアラブ人症例で発見されているものであった。またM339V変異は既報告には存在していなかった。欧米の既報告においてはエクソン9変異はなくR335H変異と伴せてエクソン9は日本人に多い変異部位である可能性が示唆された。
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