研究概要 |
ロウ症候群は1952年、Loweにより記載された先天性白内障、腎尿細管機能異常症、腎不全、神経症状を呈する伴性劣性の遺伝性疾患である。その根底にある代謝異常の本態は長年不明であったが、その解明に先立ち、1992年ポジショナルクローニングにより責任遺伝子(OCRL-1)が単離された。OCRL-1遺伝子産物は、フォスファチジルイノシトール4,5-二燐酸-5-フォスファターゼ活性を持つと報告されているが、この蛋白の異常がいかにして臨床症状と結びつくかは知られていない。本研究では、本邦でのロウ症候群患者の遺伝子解析を行い、さらにOCRL-1遺伝子産物の機能解析を行うことを目的としている。 白験例3例(2家系)およびその母親について遺伝子解析を行ったところ、OCRL-1遺伝子に異常が認められた。1例においては、9番エクソンにおいてアミノ酸置換(Ile→Thr)を伴うATC→ACCの点変異を認めた。患児の母親においても遺伝子解析を行った結果、母親は保因者であることが確認された。また、兄弟例の解析では、16番イントロンのドナーサイトに点変異(gtga→gcga)があり、スプライシング異常を生じ、同患児の皮膚繊維芽細胞より得られたcDNAには16番イントロンの一部が挿入されていた。この兄弟の母親も、遺伝子解析により、保因者であることが確認された。以上のごとく、本邦症例においてもOCRL-1がロウ症候群の原因遺伝子であることが確認された。 今後、国内の他の症例についても引き続き遺伝子解析を行っていくと同時に、まだ未知であるOCRL-1遺伝子産物の機能についても検討を進める予定で、その一環として、腎での発現部位の検討や、皮膚繊維芽細胞、腎尿細管細胞等を用いた検討を行う予定である。
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