若年性慢性骨髄性白血病(JCML)は、幼小児期発症、顆粒球系細胞の異常増殖、貧血および血小板減少を特徴とする。最近クローニングされたthrombopoietin(TPO)は、巨核球造血、血小板産生を特異的に刺激するサイトカインで、本症でみられる血小板減少に対して臨床応用が期待される。しかし、急性骨髄性白血病細胞の増殖を刺激することも報告されていることから、本研究では、JCML造血前駆細胞に対するTPOの作用を検討した。さらにTPOに対するシグナル伝達異常の解析を糸口として原因癌遺伝子の同定を試みた。 SCFとGM-CSFの共存下では、正常の骨髄CD34+CD38+細胞から少数のGM colonyが形成された。そこにTPOを添加すると、有意にcolony数およびサイズが増加した。一方、JCMLでは、colony数の増加はみられなかったが、サイズの増大は正常対照に比べより明らかであった。正常およびJCMLで誘導されたGMcolony構成細胞は、TPOの添加により、影響を受けなかった。正常対照では、CD41b陽性細胞が少数誘導されたが、JCMLでは、全く誘導されなかった。3-color解析の結果、JCMLではCD13陽性細胞上にc-Mplが強発現したのに対して、正常対照ではC-Mplの発現は検出できなかった。この結果から、JCMLにおける異常増殖は、TPOによっても誘導されることが明らかとなった。そこでSCF+GM-CSF存在下で9日間培養した細胞を用いて、TPO刺激で経時的にリン酸化される蛋白をWesternblotting法を用いて検討した。その結果、数種類の蛋白が特異的にリン酸化された。 JCMLにおいて、TPOは巨核球造血、血小板産生刺激効果よりも、むしろ骨髄系細胞の増殖を促進する可能性が示唆された。さらに、本研究によって、この異常増殖に関与すると考えられる数種類の蛋白をスクリーニングすることができた。
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