研究概要 |
1. HGFの造血作用 【方法】健常人骨髄から得られたストローマと、コントロールとしてヒト静脈内皮細胞(HUVEC)を用いて培養上清中のSCF,IL-11,IL-6,IL-3,-3,11,-1β,GM-CSF,TNF-α,IL-1R antagonistをELISA法にて測定し,HGF、抗HGF抗体もしくはantagonistの添加によるこれらの産生量の変化を調べた。なお産生量に変化のあったサイトカインについてはストローマ中のmRNAの発現についても検討した。また、ヒト〜骨髄細胞をHGF、抗HGF抗体添加下で培養して骨髄ストローマ細胞の増殖について検討した。【結果】健常人ストローマでは、HGF添加下ではサイトカインの産生に変化は認められなかったが、抗HGF抗体によりSCF、IL-11の有意な産生抑制が見られ、mRNAの発現も低下していた。また、ヒト骨髄細胞を抗HGF抗体存在下で培養したところ、2週間後の骨髄ストローマ細胞数の減少がみられた。一方HUVECでは、HGF、HGF antagonist添加のどちらでも、SCF、IL-11産生及び発現の変化はみられなかった。 【結論】骨髄ストローマ細胞より恒常的に産生されるHGFは、同じく骨髄ストローマ細胞より恒常的に産生されるSCFとIL-11の産生調節を行うことにより造血に関与しており、同時に骨髄ストローマ細胞の増殖維持にも関与していると考えられた。 2. HGFの新生児造血の関与 臍帯血(CB)には新生児期以降の血清中にほとんど存在しないHGFが多量に含まれる事正常人骨髄単核球にCB血清、正常人血清を添加してコロニー形成能を比較したところ、CBにおいてより増強されることを確認してきた。このことから、CB中のHGFが新生児(胎児)の造血能を高めていると考え、抗HGF抗体、HGFantagonistを正常人骨髄単核球に添加し、コロニー形成能を無添加例と比較した。しかし、これらの添加ではコロニー形成能に差はなく、HGFの新生児造血への関与は間接的なものと考えられた。
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