(1)大震災当時神戸市内の3つの普通幼稚園に通っていた幼稚園児を対象として、大震災後1ヵ月半に始まった、阪神淡路大震災後の子どもと親の心身の健康状態についての調査は、その後の3回の(5ヵ月、1年1か月、2年)の追跡調査において、155名の児童が継続的に追跡できていた。第3回目(1年1か月後)と第4回目(2年後)の調査結果の比較検討において、地震の被害度をライフイベンツの1つの指標として検討を試みた。地震による被害がほとんどない25人と半壊+全壊60人の2群について比較したところ、第3回目の調査において、親の回答である「動悸や息苦しさを感じることがある」「気分が落ち込んでしまいがちである」「地震のことが繰り返し思い出される」「生活が苦しく、子どもが欲しがるものを買えない」の4項目が、半壊+全壊の群において、有意に高率であった。 (2)今回の調査に伴って実施された、大震災後の育児支援個別相談において、5名の相談があった。相談業務は、幼稚園の先生との積極的な協力体制の下に行われ、その後の子どもたちの良好な経過より、たいへん有効であったと判断される。また、地震後の子どものメンタルヘルスを考える上の実態把握の意味においても、貴重な情報となった。さらに、相談内容や阪神淡路大震災以前の育児アンケート結果との関連から、現在のところ、父親の養育態度の問題との関連性が示唆されている。 (3)対象児童のうち1名は、学校における不適応、兄の問題行動、親の虐待的養育態皮に関して、神戸大学医学部小児科の発達行動外来に現在、受診中で、専門的な対応を受けている。
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