【背景】ジストロフィン遺伝子の欠失により、mRNA上での欠失している領域の塩基数が3の倍数でない場合(out-of-frame)Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)となるが、3の倍数(in-frame)であるとより軽症なBecker型筋ジストロフィー(BMD)となる。申請者は先にエクソン19内に存在するエクソン認識配列に対するアンチセンスオリゴヌクレオテド(AS-oligo)によりスプライシングの過程においてエクソンをスキッピングさせることか可能であることをin vitro、および培養細胞の系において明らかにした。このことを臨床に応用することができると、DMDの症例の欠失領域に隣接する1ないし数個のエクソンを、AS-oligoによりmRNA上から消失させ、欠失領域をin-frameに変え、表現型をDMDよりBMDに変更することが可能である。このような臨床応用を考える上での基礎研究として、DMD症例より得られた培養細胞にAS-oligoを導入し、その効果を検討する。 【方法】ジストロフィン遺伝子エクソン20の欠失を有するDMD症例より得られたリンパ芽球様細胞培養系に、エクソン19内に存在するエクソン認識配列に対するAS-oligoをリポフェクチン法によって導入し、スプライシングに及ぼす効果を検討する。 【結果および考察】ジストロフィン遺伝子エクソン20の塩基数は242塩基でout-of-frameであるため、本症例はDMDの臨床像を呈する。エクソン19つ内に存在するエクソン認識配列に対するAS-oligoを導入した後ジストロフィンmRNAを解析したところ、エクソン19のスキッピングを誘導することが可能であった。従ってmRNA上における欠失は88塩基(エクソン19)と242塩基(エクソン20)で330塩基となっており、BMDの臨床像を呈するin-frameの欠失へと変換することが可能であった。 このことは、AS-oligoによるエクソンスキッピングの誘導により、mRNAレベルにおいてDMD型のout-Of-frameの欠失からBMD型のin-frameの欠失へ変換することが可能であることを示している。今後、筋組織の培養細胞系を用いて、蛋白レベルでの検討を行なっていく予定である。
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