研究概要 |
Miller-Dieker症候群の遺伝子が脳の血小板活性化因子(Platelet-Activating Factor:PAF)分解酵素(PAFアセチルヒドロラーゼ:PAF-acetylhydrolase)のそれと高い相同性を有することから、脳内のPAFレベルが神経細胞の分化・成長・遊走に深く関与しているのではないかとの着想のもと研究を計画した。具体的には(1)ヒトPAF受容体(Type1)cDNAを培養神経細胞内へ導入し、PAF受容体を過剰発現する神経細胞がPAFあるいは他の神経栄養因子に如何に反応するかを検討する。(2)各種の脳奇形(滑脳症、多少脳回、異所性灰白質)について、PAF、PAF-acetylhydrolase遺伝子の発現をそれぞれに対するcRNAを用いたin situハイブリダイゼーション、あるいは抗体による免疫組織化学染色にて検討する。 研究成果:PAF受容体cDNAのin vitroでの神経細胞内への導入:PAF受容体cDNAを組み込んだ遺伝子発現ベクターを培養神経細胞(HTLA230或いはGOTO細胞)へエレクトロポレーションにて導入し、PAF受容体の高発現クローンをノーザンブロットにてスクリーニングすることを試みた。遺伝子導入後、数クローンを得たが、ノーザンブロットでは明らかなPAF受容体mRNA発現は検出されなかった。現在、エレクトロポレーション後、抗PAF受容体抗体を用いたロッゼトアッセイを組み合わせて、発現クローンをスクリーニング中である。今後PAF受容体cDNAのtransientトランスフェクタントにおいて、PAFと同時に各種の神経栄養因子を投与し、神経細胞の応答性を指標に、PAFレベルが神経細胞の分化・成長に如何なる役割を果たすかを検討する予定である。また、各種の脳形成障害剖検例につき、PAF,PAF-acetylhydrolaseRNAに対するcRNAをプローブとしたin situハイブリダイゼーションあるいは免疫組織化学染色を行い、これらの遺伝子発現を検討する予定である。
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