小児期に発症する各種アレルギー性疾患では、肥満細胞から放出される化学伝達物質に加えて神経因子、すなわち肥満細胞-神経線維間のシグナル伝達に始まる系もその病態形成に大きく関与する。しかしアレルギー性病態において如何なる化学伝達物質が肥満細胞から放出され神経末端に働きかけるのか、また神経細胞-肥満細胞の間は如何なる機序によってシグナル伝達がなされるのかといったことは全く不明である。本研究ではアレルギー性病態形成の一因を成すと考えられる肥満細胞-神経系路の最初のステップである肥満細胞-神経細胞・線維間のシグナル伝達機構の解析をin vitroで行うことを目的とする。具体的には(1)神経細胞-肥満細胞のco-culture系を確立し、両者の相互関係を形態学的あるいは分子生物学的立場から明らかにする。(2)樹立したシステムを利用し、神経細胞-免疫担当細胞間の相互作用をブロックするような薬物の有無を検討し、これにより新たなる抗アレルギー剤開発の基礎的研究を行う。 研究成果:肥満細胞から神経細胞へのシグナル伝達の解析 神経系細胞として、我々の樹立したヒト神経芽細胞腫株HTLA230あるいはラット褐色細胞腫株PC12をラット組織型肥満細胞腫株RBLとともにco-cultureした。なお、細胞培養はin vivoでの肥満細胞-神経細胞のCell-to-Cell contactにより近付けるため、我々が独自に樹立したラット平滑筋細胞R_<22>Cl-Fによって産性された3次元生物学的基質(R_<22>Cl-F matrix)上で行った。co-culture系を、経時的に固定し、電子顕微鏡にて観察したところ、神経細胞と肥満細胞との間に形態学的接着構造が認められた。さらにこの培養系へIgEを添加し肥満細胞から神経細胞側へのシグナル伝達の有無をimmediate-early response geneとしてのc-fos、c-jun、jun-B、jun-D、Egr-1遺伝子の発現を指標に検討した。同一培養系での神経細胞の応答と肥満細胞の応答をいかに区別するかが今後の課題と考えられた。
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