報告者が、現在経過観察中であるKostmann症候群患児は、通常量の約10倍以上のG-CSFを投与してはじめて好中球が増加する。しかしその好中球の増加はG-CSFの超大量療法を持続しても維持されない。持続的な超大量のG-CSF投与下では、周期性好中球減少症でみられる好中球の増減周期とほぼ一致する10-14日間で周期性に好中球が増減する。これらの点より経過観察中の患児は好中球産生の調節機構におけるG-CSFを介したシグナル伝達機構の解明においては非常に重要な症例であると考えられる。この患児の白血球より調節した全RNAが無傷の状態で調節できているかどうかを確認する目的でRNAの一部を用いてβ-actinの遺伝子発現をRT-PCRで確認した。結果正常対照と同様に一本のtarget bandが確認された。次にDong F.らが報告しているのと同様にプライマーを設定し、同条件にてRT-PCRを行いG-CSF遺伝子の増幅を試みた。しかしG-CSF遺伝子は増幅されず、種々の条件検討においても患児のG-CSF遺伝子は増幅されなかった。そこで、患児G-CSF遺伝子の大きな欠失等も考慮し、現在正常コントロールの末梢白血球より調整したG-CSF遺伝子を同様にDong F.らが報告しているのと同様の方法でRT-PCRを行い増幅している。このcDNAを用いて正常コントロールと患者間でノーザンブロットを行い患児のG-CSF遺伝子の発現の有無を検討中である。
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