1) 家兎に組み換え体ヒトヒスチダーゼを免疫し、抗ヒトヒスチダーゼ抗体を調整した。その力価はオクタロニー法で確認した。これとは別に大腸菌の系で発現させたラットヒスチダーゼを家兎に免疫し、抗ラットヒスチダーゼ血清を調整した。この抗血清はラット肝臓のヒスチダーゼ活性をdose dependentに阻害した。この抗血清をもちいて、ラット各臓器を免疫組織染色したところ、ヒスチダーゼは次の細胞群に存在していることが判明した:l)表皮の顆粒層2)門脈周辺の肝細胞3)腎の近位尿細管細胞4)胃の腺管細胞。今までの報告では、ヒスチダーゼ活性は表皮のとくに角質層にあるということであった。今回角質層でなく顆粒層にヒスチダーゼ抗原が存在することが示されたことは、顆粒層以下でヒスチダーゼタンパクの転写、翻訳がおこなわれていることを示唆するものといえる。そして、顆粒球にはフラグリンというヒスチジンを多く含むポリペプチドが豊富なことから、その環境におけるヒスチダーゼの役割について興味がもたれる結果となった。 2) ヒスチジン血症児のヒスチダーゼ遺伝子の各エクソンをpolymerase chain reaction(PCR)法で増幅し、点変異があるかをスクリーニングした。変異があると思われるPCR産物に関して核酸塩基配列を決定し、患者の一人にエクソン10と12に1塩基ずつミスセンス変異を同定した。エクソン10の変異は父の1アリルに、エクソン12の変異は母の1アリルにも存在した。また、これらの2つの変異はドットブロット法で正常50人のヒスチダーゼ遺伝子にはみられないことを確認した。患者の妹は血中ヒスチジン値は正常範囲内であるが母型変異アリルもっていた。したがって、父、母、そして妹は保因者であるといえる。今後さらにこれらの変異を発現ベクターに組み込み、ヒスチダーゼ活性におよぼす影響に関して検討していく。
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