研究概要 |
我々は皮膚の表皮細胞の増殖及び分化に関する研究を進めている。つまりヒト皮膚には赤血球膜骨格蛋白質の類似蛋白質であるスペクトリンや4.1蛋白質が存在することを初めて確認し報告してきた。これらの膜骨格蛋白質の表皮細胞における機能について実験を進める過程で、細胞の分化の段階により蛋白質の発現状態に有意な差を見い出し、細胞の分化における膜骨格蛋白質の重要性を示し、さらに皮膚疾患におけるこれらの蛋白質の変化を観察した結果、細胞増殖疾患である乾癬表皮細胞における4.1蛋白質の異常分布を確認した。今回、皮膚悪性腫瘍である有棘細胞癌、基底細胞上皮腫において4.1蛋白質の低発現が観察された(Shimizu et al,Arch Dermatol Res in press)。これらの研究をすすめる一方、我々は1996年にヒト皮膚、特に表皮基底細胞におけるMIFの強い発現を報告した。(Shimizu et al,FEBS lett,1996)。さらに我々の実験により、アトピー性皮膚炎疾患においてコントロール群と比べ有意に血清MIFの濃度の上昇が確認された(Shimizu et al,BBRC,1997)。乾癬表皮細胞の4.1蛋白質にみられる異常なバンドのシークエンスの解析を進める一方、我々が皮膚において世界で初めてみつけた細胞増殖や炎症に関与するサイトカインとしてのMIFと細胞膜の重要な構成成分である膜骨格蛋白質との相互作用による相乗効果により、皮膚の炎症、細胞増殖が制御されていると推察される。これらを明らかにすることにより、生物学的作用に不明な点の多いMIFのサイトカインやホルモンとしての機能そのものの解明につながるものと考えられる。
|