私たちは以前、男性ホルモンの一つであるdehydroepiandrosterone(DHEA)がアトピー性皮膚炎でみられるTh2細胞の優位を促進している可能性があることを明らかにした。局所においてDHEAを不活性型のDHEA-sから活性型のDHEAに変換する酵素がDHEA-s sulfataseである。この酵素は、局所ではモノサイト中にふくまれている。私たちは、この酵素活性に及ぼすサイトカインの影響を、モノサイトのセルラインであるTHP-1を用いて調べた。DHEAを含まない無血清培地をもちいてTHP-1を培養し、IFN-γ、IL-4、IL-10、IL-12など10種類のサイトカインを加えてさらに培養後、細胞を採取し、DHEA-s sulfataseの活性をしらべたが、今回の実験では、サイトカインによる活性の違いはみられず、コントロールとの差もはっきりしなかった。また、THP-1にDHEAを加えた後、LPSで刺激し、T細胞をTh1に分化させる作用のあるIL-12の培養上清中の産生量を調べたが、コントロールとの差はみられなかった。私たちはアトピー性皮膚炎局所の特有の病態のなかでDHEA-s sulfataseの活性が変化することで、炎症のコントロールに影響がでるのではないかと考えたが、今回の研究で、DHEA-s sulfataseの活性は炎症局所で大きな変化を示すものではないということが明らかになった。また、喘息などのアレルギー疾患において、好酸球の浸潤に関係するplatelate-acutivating factor(PAF)を不活性化するPAF acetylhydrolaseの活性が低下が明らかになっている。今回私たちは、約70例のアトピー性皮膚炎患者のPAF acetylhydrolase活性を測定し、その重症度および好酸球数との関連を調べたが、はっきりした相関は得られなかった。この結果は、アトピー性皮膚と喘息では、好酸球浸潤の機序に違いがあることを示唆している。
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