抗真菌剤のin vitroにおける効果を調べるには、液体培地を使ったミクロ希釈法が現在の標準的な方法である。現在発売されている外用抗真菌剤は、過去に発売された薬剤の数十倍のMICを誇るが実際の治癒率はほとんど上昇していない。筆者はこのギャップを小さくするべく、実際の感染状態に近いヒト皮膚角層を用いる薬剤感受性検査法を検討している。まず、Trichophytonmentagrophytesの小分生子のみからなる菌液を作成した。当初、藤田らの方法による分節分生子の作成を試みたが、分節分生子を形成せず、サブローブドウ糖寒天培地上に生成した小分生子を用いることとした。菌液の保存には、PBSにグリセリンを混和するよりも5%の濃度にDMSOを混和したほうが、菌の生存率が高かった。この菌液を、シアノアクリレート系接着剤によりストリッピングして得られたヒト角層に接種した。湿潤環境で48時間後、小分生子は角層に接着したが菌糸の伸長はまだほとんどみられなかった。7日後では、菌糸の伸長がみられ、14日後には、角層表面はほとんど菌糸で覆われた。次に、各種の市販の抗真菌外用剤を塗布後、角層をストリッピングし、上記の小分生子を接種した。現在の抗真菌剤の外用は1日1回であるので、塗布24時間後にストリッピングを行った。判定は、菌液接種の7日後に行い、外用剤を塗布していない角層をコントロールとして菌糸の伸長があるか否かで比較した。その結果、外用抗真菌剤を塗布した角層では、菌糸の伸長はみられなかった。なお、判定はPAS染色光顕標本でも十分と考えられた。14日後では、雑菌の混入がみられ、判定できなかった。現在、経口抗真菌剤を内服後採取した角層で、菌糸の伸長がみられるか検討中である。
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