研究概要 |
1、皮膚扁平上皮癌(SCC)55例のホルマリン固定・パラフィン包埋原発組織を材料とし、E-カドヘリン、カテプシンD,P53に対する抗体を用いて免疫染色を行った。(1)E-カドヘリンの染色結果:リンパ節転移を生じた23例(転移群)と生じなかった32例(非転移群)とを検討したところ、転移群では91.3%、非転移群では56.2%にE-カドヘリンの発現が減少していた。この結果より、原発組織におけるE-カドヘリンの発現の減少は、その腫瘍が転移を生じる可能性を強く示唆すると考えられた。また組織学的grade別に転移群、非転移群で検討すると、未分化形に比して高分化型において、より明確に相関がみられた。以上より、E-カドヘリンは、特に高分化型SCCにおいてリンパ節転移を示唆する一つのマーカーとして重要であると思われた。しかしながら、非転移群でも約半数にE-カドヘリンの発現の減少がみられたことは、癌細胞の原発巣からの離脱は生じたが、癌の転移のその後のステップすなわち血管やリンパ管への浸潤、新たなる部位への移動、二次臓器への定着および増殖といったどこかで途切れ、転移のメカニズムが成立しなかったものと考えられる。今後それらに対応するマーカーを検討して行きたいと考えている。(2)カテプシンD,P53の染色結果:現在染色および分析中。 2、AMeX包埋切片を用いて、SCC11例、ケラトアカントーマ(KA)9例、ボ-エン病(BD)11例、基底細胞癌(BCC)25例におけるE-カドヘリンの発現を検討したところ、転移を生じないことを特徴とするBDとBCCでは、それぞれ90.9%、96.0%でE-カドヘリンは正常皮膚と同等に発現(残存)し、SCCでは18.2%、KAでは33.3%が減少した。この研究におけるSCCの症例には転移例は1例しかなかったため、E-カドヘリンが減少した症例が少なかったと考えられる。KAでの結果より、E-カドヘリンは浸潤のマーカーでもあるという側面も示唆された。
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