末梢血好酸球増多や皮膚組織への好酸球浸潤はアトピー性皮膚炎のみならず多くの炎症性皮膚疾患においてみられる現象である。本研究においては湿疹反応の一つとされる接触過敏反応を用いて好酸球増多および組織への好酸球浸潤モデルの作成を試み、さらに好酸球浸潤の機序の解析を行った。 結果: 1.BALB/cマウスにシクロフォスファミド(150mg/kg)を皮下投与し(day-2)、7%塩化ピクリルで剃毛腹部に感作(days 0 and 1)したところ感作2週間後に著明な末梢血好酸球増多がみられることがわかった。DNFBやオキサゾロンによる感作ではこのような現象はみられなかった。 2.感作後経時的に1%塩化ピクリルで耳介に惹起し、24hr後の組織中の好酸球数を検討したところ、やはり感作2週間後に惹起した際に最も強い真皮への好酸球浸潤がみられた。またこの現象はアレルギー性の接触過敏反応に特異的であり、感作2週間後にクロトン油で耳介に刺激性皮膚炎をおこしても好酸球の血管外への遊走はおこらなかった。 3.耳介真皮の血管壁には惹起6hr後からVCAM-1の発現がみられ、惹起直前に抗VCAM-1抗体を全身投与することにより真皮への好酸球浸潤は著明に抑制された。ICAM-1の発現もみられたが抗ICAM-1抗体の投与では好酸球浸潤は抑制されなかった。 このようにマウス接触過敏反応において末梢血好酸球増多や皮膚組織への好酸球浸潤を誘導することが可能となった。さらに好酸球浸潤は血管壁のVCAM-1の発現に依存していることがわかった。次年度はこれらの現象に関わるサイトカイン/ケモカインをさらに詳しく検討し、好酸球が皮膚の炎症に果たす役割や各種の薬剤による好酸球浸潤抑制作用の有無とその機序について研究を進めていきたいと考えている。
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