研究概要 |
黒色腫患者において切除したリンパ節内の微小転移の有無を知るため,組織学的にリンパ節転移陰性と判定された24例から切除された331個のリンパ節を,色素細胞特異抗体HMB-45を用いて免疫組織学的に染色し,リンパ節における黒色腫細胞の存在を検討した。その結果15例(63%)の,47個のリンパ節(14.2%)にHMB-45陽性の黒色腫細胞が検出された。しかし,これらのHMB-45陽性細胞はいずれも集塊を形成することなく,転移腫瘍細胞の集塊が通常観察されるリンパ節の被膜下よりもむしろ皮質領域に多くみられた。さらに6例から得られた23個のリンパ節についてRT-PCR法による黒色腫関連抗原(チロジナーゼ,MART-1,Pmel-17,TRP-1およびTRP-2)のmRNAの検出を同時に試みたところ,HMB-45陽性細胞が認められなかった6個(26%)のリンパ節においても,上記のいずれかの黒色腫関連抗原の発現が検出された。以上の成績は,黒色腫患者の領域リンパ節内には,組織学的には検出が不可能なごく少数の黒色腫細胞が高頻度に存在することを示している。 一方,遠隔転移を有する黒色腫患者5例の末梢血からチロジナーゼmRNAの検出を試みたが,1例にのみ陽性であった。これらの症例では既に血中の5-S-CD値が上昇しており,末梢血のRT-PCR法によるチロジナーゼmRNAの検出は腫瘍マーカーとしての有用性が低いことが示唆された。
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