本年度は新鮮凍結標本を用いて、研究方法の確立および結果の再現性について検討を行った。(方法)本邦人に発生し、かつ日光紫外線の関与が少ないタイプの悪性黒色腫について原発巣10例、皮膚転移巣4例、リンパ節転移巣2例(計16例)の新鮮材料よりDNAを抽出後、Nick translation法でspectrum green-dUTPを用いて標識した。同様に正常人リンパ球から抽出したDNAをspectrum red-dUTPで標識した。DNAの純化後、Cot-1 DNAを加え、その後熱処理による変性を行った。常法通り作成し保存してある正常人末梢リンパ球染色体標本を熱変性後、脱水し、上記標識後の腫瘍細胞DNAおよび正常リンパ球DNAを標本上に乗せハイブリダイズを行った。DAPIによる染色体の対比染色を行った後に蛍光顕微鏡下でspectrum green、spectrum red、DAPIそれぞれの染色像を1検体当たり約20個の染色体標本についてCCDカメラでデジタルgray scaleイメージとして取り込み、それぞれに疑似カラーを与え重ねた後、3種の合成イメージを作った。合成色のシグナル強度をスキャンし欠失あるいは増幅している染色体部位を特定した(Cyto Vision A/W.APPLIED IMAGING社を使用)。(結果)解析が可能であった症例は16例中13検体で1検体当たりの解析可能染色体標本数は8〜24個であった。従来、欧米から報告されている悪性黒色腫(紫外線関連黒色腫)の遺伝子変化とは異なったパターンがみられ、かつ原発巣と転移巣間における染色体の変化についても興味がある所見がえられた。現在上記研究結果の報告の準備を行っている。また、次年度に予定しているホルマリン微小標本を用いたCGHについても、本年度に行った凍結新鮮標本と同一症例のホルマリン固定標本を用いて研究方法の確立のための検討を開始している。
|