膠原病は皮膚、関節、血管、および内臓諸臓器を病変とする全身性自己免疫疾患の代表的疾患である。申請者は軽症型強皮症の血清学的マーカーとされる抗セントロメア抗体(ACA)を用いてセントロメア抗原の同定、セントロメア蛋白の構造と機能の解析、疾患特異性の検討を行ってきた。ACA陽性血清を用いて今回新たにクローニングに成功した27kDa蛋白(p27)についてその臨床的意義を検討した。その結果p27はこれまでに報告されていない蛋白であり、そのリコンビナント蛋白を作製し、84例のACA陽性血清と215例のACA陰性白己免疫血清についてその反応性をイムノブロット法で検討したところ、4例のACA陽性血清と1例のACA陰性血清が反応した。5例の臨床的特徴として軽度肝機能障害、間質性肺炎、心筋症が散見された。目下のところp27の局在及び機能については不明であるが、抗p27抗体とACAに密接な関係が予想され、またACA陽性例は通常内臓病変を伴わない予後のよい軽症型強皮症に属するといわれているが、抗p27抗体併存例は積極的な内臓病変の検索が必要と思われた(以上研究業績1)。またACAの主要対応抗原のひとつであるCENP-Aに関しては削除変異株によるリコンビナント蛋白および合成ペプチドを用いた実験により、ヒストン3と相同性をもつC端には自己免疫エピトープは存在せず、N端に2箇所メジャーなエピトープが存在することが判明した(未発表)。またACA陰性自己免疫血清を同定していくうちに、新たな核小体自己抗原としてKi-67をクロー二ングすることに成功した(研究業績2)。Ki-67はPCNAなどと同様に病理組織学において悪性度のマーカーとして知られている細胞周期関連の蛋白である。これまでにSLEモデルマウスにおける同蛋白に対する自己抗体の報告はあるが、ヒトの自己免疫疾患での陽性率や臨床的意義についての報告は世界で初めての報告である。
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