研究概要 |
ラット皮膚組織を用い、ヒスタミン含有肥満細胞とペプチド含有神経との相互作用を解析し、急性皮膚炎症、特に血管透過性亢進の発現機序を解明した。1.免疫組織化学的手法による解析により、無処置ラット皮膚組織に、ペプチド含有神経終末が観察された。サブスタンスP(SP)は血管周囲に、ヒスタミン(HIS)含有肥満細胞と近接して観察され、形態学的に相互作用が示唆された。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は主に表皮直下に分布していた。Vasoactive intestinal polypeptideは染色されなかった。2.カプサイシンの塗布前処置により、真皮上層で神経ペプチドがほぼ枯渇した。また、この枯渇に対応して肥満細胞数が減少し、電顕で細胞内顆粒密度の減少も証明された。塗布中止10日後には神経ペプチドが再び観察され、肥満細胞数、顆粒密度の回腹もみられた。生理・病理学的に相互作用が示唆された。3.ラット背部皮膚に炎症誘発物質を皮内注射し、血管拡張と血管透過性亢進作用を反射スペクトル法で測定した。HIS、SPは有意な血管拡張に加え、著しい透過性亢進を用量依存性に示した。CGRPは血管拡張作用が主であり、透過性亢進作用はHIS,SPに比べ有意に弱かった。透過性亢進に関して、HISとSPの重要性が示唆された。HISの透過性亢進はジフエンヒドラミン(DPH)、シメチジンに加え、SP拮抗薬、[D-Pro_2,D-Trp_<7,9>]-SPで抑制された。また、SPの作用は[D-Pro_2,D-Trp_<7,9>]-SPに加え、DPHでも抑制された。SPとHISの両受容体を介した相互作用が認められた。血管拡張に関しては両受容体を介した相互作用は明らかでなかった。急性皮膚炎症において、肥満細胞はHISを介してSP含有神経とクロストークし、透過性調節に寄与していることが証明された。次年度に慢性皮膚炎症の解析を行うため、強皮症自然発症モデルマウスの繁殖を行った。肥満細胞とそのプロテアーゼの慢性皮膚炎症への影響を検討する。
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