研究概要 |
皮膚におけるマスト細胞増殖機構解析のためのモデルとして、我々はNIH/3T3線維芽細胞とマウス骨髄由来培養マスト細胞の共生培養系を用いている。これまでにマウス有棘細胞癌培養上清、炎症性サイトカインIL-1α、TNFαが線維芽細胞を介しマスト細胞増殖を促進することを見出し、現在この系におけるマスト細胞増殖機構の解析を試みている。WBB6F_1-+/+およびW/W^vマウス由来のマスト細胞を比較した結果より、この系でのマスト細胞増殖にはStem cell factor(SCF),c-kitを介した経路が重要な役割を占めているが、それ以外の因子も存在することが示唆された。細胞接着因子はその候補の一つであるが、RGDSペプチドをこの共生培養系に加えてもマスト細胞増殖は阻害されないことがわかった。 種々の皮膚疾患病変部で認められるマスト細胞増加に対する線維芽細胞の役割を調べるため、手術、生検の際得られた皮膚病変組織より、線維芽細胞を分離・培養し、その比較を試みた。ケロイド、肥厚性瘢痕、瘢痕強皮症、神経線維腫、アトピー性皮膚炎、および、正常皮膚を対象とし、各々より得られた3ないし5代目の線維芽細胞培養上清中に含まれるSCFをELISAにて測定した。いずれの線維芽細胞でも無刺激でSCFの産生がみられ、その量には差が見られたが、まだ症例数が少ないため疾患との関連については判定できていない。また線維芽細胞をサイトカインで刺激した場合のSCF産生量についても検討しているが、これまでのところIL-α、TNFαでは明らかなSCF量の変化は見られていない。現在他のサイトカインについて検討中である。
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