黄色腫組織での泡沫細胞のリクルートに際して、血管外に漏出したLDLが血管内皮細胞での転写調節因子の1つであるNFκBを活性化することに関与しているかどうかについて検討した。 高コレステロール血症ウサギ背部にデキストラン硫酸を皮内注射して、実験的黄色腫を作成した。ヒト血清から分離した低比重リポ蛋白(LDL)を実験的黄色腫と1昼夜孵置して修飾したLDL(m-LDL)の存在下で、皮膚微小血管内皮細胞を培養し、抗ヒトp65抗体を用いて蛍光抗体法にて観察した。その結果、25μg/mlのm-LDLで30分間刺激で、一部の細胞でNFκBの構成蛋白であるp65の核内への移動がみられたことから、NFκBが活性化されたことが判明した。IL-1βおよびTNF-αによる刺激では、すべての細胞でNFκBの核内への移動がみられたが、修飾を施さないLDLでは核内移動はみられなかった。 次に、25μg/mlのm-LDLで30分間刺激した血管内皮細胞核抽出蛋白とNFκB結合部位を有するオリゴDNAを用いたゲルシフトアッセイ法にて検討した結果、NFκBの核内移動を示す特異的なバンドが認められた。ゲルシフトアッセイ法でも、血管内皮細胞でm-LDLによってNFκBが活性化されることが確認された。 以上の結果より、黄色腫組織内でLDLは酸化的修飾を受け、一部の血管内皮細胞のNFκBを活性化させることが判明し、m-LDLによる血管内皮細胞での白血球接着分子(VCAM-1やELAM-1)の誘導がNFκBの活性化を介して生じる可能性が示唆された。これらの成果は、第49回日本皮膚科学会西部支部総会において報告した。
|