我々は可溶化ヒト高親和性IgE受容体(Fc ε Rl)α鎖細胞外ドメイン(so1ub1e α)を用いたアトピー性皮膚炎(AD)患者血清IgEの測定で、AD患者血清中のFc ε Rl結合性IgE値は正常人に比べて有意に低下している、という結果をすでに報告した。そこでこの結果より血清総IgE値の高いAD患者においては、血清中にIgEのFc ε Rlへの結合を阻害する因子が出現してくる可能性が示唆され、今回はそれらの因子の検討を行った。 (1)まず正常人・AD患者より血清を採取し、臨床像ならびに血清総IgE値、IgE、IgE RASTスコア、ADの重症度などのパラメーターを測定した。その結果AD患者血清IgE値は有意に高値を呈した。 (2)患者血清中のFc ε Rl結合性IgE値をso1ub1e α-ELISA法にて測定し、Fc ε Rl結合性IgEの総IgEに対する割合を評価したところAD患者では有意に低値を示した。 (3)各種IgE結合阻害因子(抗抗IgE自己抗体、抗Fc ε Rlα鎖自己抗体、可溶性Fc ε Rlα鎖、可溶性CD23、その他)をそれぞれのELISAの系で検索したところ、あるAD患者血清中には抗IgE抗体、抗Fc ε Rlα鎖抗体の存在が確認された。 今後、これらのIgE結合阻害因子並びにADの臨床的パラメーターの相関を統計学的に検討し、それら因子の生化学的、生物学的特性、分子生物学的特徴を解明し検討する予定である。
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