研究概要 |
ヒト乳頭腫ウイルス(Human papillomavirus:HPV)はヒトの扁平上皮に様々な疣贅や腫瘍を作るウイルスであり,宿主がヒトに限られるために動物実験はできず,もっぱらそのウイルス核酸の塩基配列の相同性から型分類され,現在までに82種以上の遺伝型が報告されている.病変生検材料から得ることかできるウイルス粒子は少ないので抗原として使うのは大変困難である.蛋白発現系として,発現産物の生物活性を保持ししかも大量に蛋白を発現できるバキュロウイルスに注目した.皮膚型のHPV2型,3型,5型のうち,申請者は,パスツール研究所留学中にHPV5のウイルス様粒子を作成し,その抗原性としての有用性を確認した.HPV3のウイルス様粒子を同様の手法にてすすめ,ウイルス様粒子を形成することはわかっている.研究の最終の目的は,皮膚型のウイルス様粒子をバキュロウイルス発現系で産生しそれを抗原としてELISA法にて抗HPV L1抗体を測定し疾患との相関をみることと型の違うウイルス様粒子同士の交叉性をみることである.今回はバキュロウイルス発現系で3つ目のHPV2型のウイルス様粒子を産生することを目的とする. 初年度として組換えバキュロウイルスベクターの作成を行った. バキュロウイルスベクターであるpVL1393のマルチクローニング部位にHPV2-L1 geneをクローン化する.そのためHPV2の全塩基配列からL1 geneだけをPCRにて増幅することを試みた.HPV3と比べ簡単にいかずプライマーの位置の設定をかえて複数回行ったがうまく増幅できていない.またテンプレートのHPV2 DNAも大量調製を行って塩基配列確認中である.また尋常性疣贅自体からの抽出DNAからもPCRを試行している.今年度はベクターへ導入後のシークエンスの変化がないことを確認後バキュロウイルス発現系にてウイルス様粒子産生を試みる予定である.
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