細胞膜は、種々の蛋白質から成る膜骨格によって細胞内側から裏打ちされている。この膜骨格の構造と機能については、これまで主にヒト赤血球で解析されてきたが、ヒト表皮角化細胞においても数種類のヒト赤血球膜骨格に類似した蛋白質の存在が免疫化学的に確認されている。 ヒト表皮角化細胞の主要な裏打ち蛋白質であるスペクトリン様蛋白質(フォドリン)はCa^<2+>スイッチ(培地のCa^<2+>濃度を上げると細胞接着が起こる、今回は0.07mMから1.85mMに上げた)によって細胞質から細胞膜に移動する。同様にアクチン(細胞骨格)、ビンキュリン(裏打ち蛋白質)でも膜への移動が見られる。我々は培養ヒト表皮角化細胞にelectroporation法(電気穿孔法)を用いて抗ヒト赤血球スペクトリン抗体を導入し、細胞接着の様子を共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。この結果、細胞内で抗スペクトリン抗体とフォドリンの免疫複合体が形成され、アクチン、ビンキュリンとも細胞質から膜への移動が認められず、細胞接着が阻害された。このことからフォドリンが細胞接着に重要な役割を果たしていることが示唆された。 ヒト表皮角化細胞には、このほかにアンキリン、バンド4.1蛋白質などの裏打ち蛋白に類似した蛋白質が存在する。今回我々は、Ca^<2+>スイッチに伴うバンド4.1蛋白質の動きを共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。Ca^<2+>スイッチ前後でバンド4.1蛋白質はフォドリンと同様に細胞質から膜付近に移動した。このことからバンド4.1蛋白質もヒト表皮角化細胞の細胞接着に重要な役割を演じていることが示峻された。 今後バンド4.1蛋白質やアンキリンに関してもelectroporation法による抗体導入を行い、細胞接着への関与について検討する予定である。
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