本年度において、エンドセリンの色素細胞由来チロジナーゼの活性化が、酵素の活性化に由来するかあるいは蛋白誘導によるかを検討するため、(1)チロジナーゼ蛋白質検出のためのELISAシステムの確立(2)本法の色素細胞への応用を目標とした。 その結果、抗キノコ由来チロジナーゼヒツジ抗体を用いた競合分析LISAシステムによって、比較的高感度で安定したチロジナーゼ蛋白測定系が確立された(J.Immnol.Meth.投稿中)。本法は、ヒト培養色素細胞中のチロジナーゼ蛋白を何ら前処理なく測定できた。また、色素細胞数とチロジナーゼ蛋白量との関係は、良好な相関性が得られた。 次に本法を用いて培養色素細胞のチロジナーゼに対するエンドセリンの影響を検討した。コンフルエントな色素細胞にエンドセリン-1を各種濃度で添加し、一定時間培養した後にチロジナーゼ蛋白の発現量とチロジナーゼ酵素活性を測定した。その結果エンドセリン-1により色素細胞のチロジナーゼ酵素の誘導が認められた。しかしながら、本検討ではYadaらが報告しているようなエンドセリン-1によるチロジナーゼ酵素活性の亢進は認められなかった。またこのエンドセリン-1によるチロジナーゼ蛋白誘導はETa受容体拮抗薬であるBQ123によって阻害され、ETb受容体拮抗薬であるRES701-1で影響されなかった。これらのことは、エンドセリン-1による色素細胞のチロジナーゼ蛋白の誘導にはETa受容体が関与していると思われた。 次年度以降、この色素細胞のチロジナーゼ誘導が表皮細胞由来エンドセリン-1によってパラクリン的に如何なる調節を受けているか混合立体培養系を応用して検討する。
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