色素細胞に、ET-1受容体が多量に存在し、チロジナーゼ媒介性メラニン生成機構にET-1が関与していることが判明して以来、色素沈着機構とET-1の関係が研究されてきた。しかし、色素細胞に影響するET-1を産生する細胞に対しても不明な点が多い。lnoueらは、色素細胞に影響するET-1供給源を分化誘導時の表皮細胞に由来する可能性を報告しているが、色素細胞との相互作用に関しては報告されていない。そこで今回、前編で確立したチロジナーゼEIAシステムを用いて、ET-1による培養色素細胞のチロジナーゼ酵素発現調節機構の解明を試みた。 その結果ET-1を培地中に共存させ、色素細胞を培養すると色素細胞の増殖は、培養4日目以降ET-1添加濃度に依存して亢進した。そこでコンフルエントな色素細胞に、色素細胞の増殖を明らかに亢進する1-100nMET-1含有培地と共に48時間培養し、色素細胞内のチロジナーゼ蛋白の発現を検討すると、ET-1濃度用量依存的にチロジナーゼ蛋白の発現の増強が認められた。しかしながらこの時、蛋白発現に依存したチロジナーゼ活性の亢進は認められず、ET-1はチロジナーゼ発現を増強しても活性化作用は無いものと思われる。従って、チロジナーゼの活性化機構が別に存在することが推察できた。次にこのチロジナーゼ蛋白のET-1による発現調節機構を検討するために、ET-1受容体特異拮抗薬BQ123とETb受容体特異拮抗薬RES701-1を色素細胞の培養倍地中に添加した際のチロジナーゼ蛋白誘導に及ぼす影響を検討した。その結果、いずれの拮抗薬もチロジナーゼ活性はに影響しなかった。しかし、チロジナーゼ蛋白発現はBQ123によって阻害されたが、RES701-1によっては阻害を受けなかった。以上の事から、ET-1による色素細胞内チロジナーゼ蛋白発現機構にはER-1受容体が深く関わっていることが明確になった。
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