Differential Displyは遺伝子サブトラクション法の中では特に手技が簡便で、また特異性よりもむしろ感度に優れている。反面、生体内を反映しない、僅かな操作上ないし酵素反応上の変化を拾いやすい。本年度は5種類のプライマーを用いDifferential Displayを行い、SAP-3、SDF1、CD63等が強皮症線維芽細胞で特異的に発現していることを見出し、Northern Blotにて確認した。また更にこれを繰り返し、総計70あまりの強皮症線維芽細胞で特異的に発現ないし発現欠損している未知の遺伝子クローンを選別した。この結果は実際に、予想に反して多くのクローンが選別されており、この全てをクローニングすることは現実的でない。よって更に特異的なもののみに絞り込むべく、これらの遺伝子の一部の発現を、total RNAに戻してRT-PCRで検討したところ、前記以外の遺伝子ではDifferential Displayの結果を必ずしも再現し得なかった。つまり70あまりの選別した遺伝子の中には、in vitroでの酵素反応上のアーチファクトが含まれていた可能性が高い。よって現在、Differential Displayと同様にPCRを応用した方法で、実際に核酸ハイブリッド作成ステップを持つ、さらに特異性の高いsurpressive PCR法を構築、検討を行っている。
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