本研究の目的は、強皮症線維芽細胞が陥っている異常のメカニズムと、それに関わる未知の分子について、正常線維芽細胞の発現遺伝子から遺伝子サブトラクションの手法を用い検討する事である。本年度は、また新たに20種類のプライマーを用いDifferential Displayを行い、Diffuse Sclerodemna 及びMorpheaの皮膚硬化部線維芽細胞に特異的に発現している遺伝子を、健常者線維芽細胞、並びに健常部線維芽細胞と比較、検討した。結果、オートラジオグラフィーで確認されたおよそ3000個のクローンから、特異的に発現している遺伝子として、それぞれ12及び27の遺伝子断片をクローニングした。遺伝子断片の長さは31bpから175bp、平均133bpで、総計3843bpのシーケンシングを行った。その結果をデータベースに参照したところ、病変部から採取された線維芽細胞に特異的に高度に発現している遺伝子の中にCytochrom oxidase及びATPaseにほぼ完全に一致するものが複数含まれていた。この二つの遺伝子はミトコンドリアDNAにそれぞれ別々にコードされている。培養における細胞間の増殖、及び生存率に差がないため、この結果から硬化部の線維芽細胞では、ミトコンドリアDNAの発現が高度に亢進している可能性が考えられた。 また、過去に類似した遺伝子の報告のない、全く新たな16個の遺伝子をクローニングしており、これらについては更にシーケンスを精密にし、パテント出願を準備中である。
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