研究概要 |
細胞死の研究が進歩しアポトーシスが重要な役割をしめることが明かになり、疾患の特性のみならずその治療にも関与していることが考えられる。癌細胞に効率よくアポトーシスを誘導できれば、より効果的な治療が可能となる。今年度は同系由来の放射線感受性細胞と抵抗性細胞に対し、放射線と抗癌剤を併用し、アポトーシスが誘導できるか、またそれによる増感効果に着目した。 細胞は放射線感受性株のNMT-1と、この細胞より得られたNMT-1Rを用いた。放射線と併用する抗癌剤はエトポシドを使用した。エトポシドの細胞致死効果はIC50でみると放射線抵抗性細胞NMT-1Rの方が4倍大きく抵抗性であった。それぞれの細胞に対するIC50量を用いて、照射同時、照射前後(3,6時間)にエトポシドを併用してもそれぞれの細胞生残率に差異はみられず、投与時期は併用効果に影響しなかった。エトポシドを照射と同時併用した場合、放射線感受性細胞NMT-1では相加効果のみで増感効果は認められなかったのに対し、放射線抵抗性細胞NMT-1Rでは相乗効果が認められた。放射線による細胞生残率曲線でNMT-1Rは大きな肩を有するのに対し、放射線エトポシド併用ではNMT-1と同じく肩が消失した。その機序をDNA断片化出現率で検討すると放射線感受性細胞NMT-1では放射線単独とエトポシド併用で差がないのに対し、抵抗性細胞NMT-1Rでは放射線単独ではコントロールと差異がなくごく軽度であるのに対し、放射線エトポシド併用ではDNA断片化出現率が増加しており、アポトーシスの頻度が感受性と相関することが示唆された。 放射線抵抗性細胞における放射線エトポシド併用の相乗効果はアポトーシスが強く関与していることが示唆された。平成10年度はその機序について、さらに分子生物学的に検討する予定である。
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