研究概要 |
骨髄が広範に照射されるような放射線療法や、強力な化学療法によって生じる遺伝子障害は、将来二次発癌を始め様々な合併症を併発する可能性がある。本研究では、癌治療後に生じる遺伝子突然変異を評価する指標として、比較的検出が簡単であるhypoxanthine-guanine phosphorybosyl transferase(hprt)locusの変異を検出することにより、遺伝子障害に起因する合併症を予測する方法を開発することを目的とした。本年度は動物実験を主体に行い、マウスに0.5-2.5Gyの重粒子線の全身照射、および2-6GyのX線照射を行い、照射後1週、1ケ月後に脾臓を摘出し、脾臓リンパ球における遺伝子変異を検討した。照射したマウス脾臓より抽出したリンパ球を主体とした細胞に対して、細胞を数回洗浄した後histopaqueを通してリンパ球の豊富な分画を得た。このリンパ球を96孔のラウンドボトムマイクロプレートに、1孔あたり2個の割合で細胞をまいた。培養液は補体を不活化してFCSと、インターロイキン-2,コンカナバリンA,Feeder cells,6-チオグアニンを用いた。2ヶ月後に顕微鏡下で観察をおこない、feeder cellの範囲を超えて明らかな増殖の認められた場合を陽性とし、突然変異細胞と判定した。この結果、マウス脾リンパ球は10個あたり、線量1Gyあたり10個の突然変異数が認められた。来年度は放射線治療を受けた患者を対象に、リンパ球を採取し、坦癌患者の遺伝子変異と正常人の遺伝子変異を、比較検討する予定である。
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