放射線治療に対して抵抗性腫瘍、あるいは縮小しても再増殖する腫瘍は、放射線照射時に肉眼的に観察される腫瘍サイズの全体的縮小に比べて、腫瘍細胞数の減少が少なく、DNA損傷が 回復しやすい機序や、照射後に増殖が促進される機序が作用している。腫瘍細胞にX線を照射した場合と重粒子線照射を行った場合では、放射線に対する遺伝子変異の出現頻度が異なる。 本年度は、昨年度に引き続き各種ヒト悪性腫瘍由来の培養細胞に対して、単層培養でX線と重粒子線照射を行い、Colony法により放射線感受性と遺伝子変異の出現を検討した。重粒子線を照射した場合、同一生存率を与える線量により、hprt座の変異の出現率を比較した。炭素線はX線に比べて、著しく遺伝子変異が発生した。ネオン線は炭素線とX線の中間の出現率となった。重粒子線は殺細胞効果が強いが、照射後の生存細胞に著しい遺伝子変異を誘発した。この遺伝子変異出現と放射線感受性の関係は、現在不明であり、将来検討すべき課題となった。APO2.7モノクロナール抗体を用いて、フローサイトメトリーでアポトーシスの出現頻度を検討した。X線では照射線量を5-30 Gyとした場合、アポトーシスを示す細胞は50%程度で、線量を増加してもその出現頻度は同様であった。一方、重粒子線照射の場合は、80%程度がアポトーシスを示した。また、重粒子線では、細胞株によりアポトーシスの出現頻度が著しく異なっていた。
|