低血糖(68+13mg/dl)、正常血糖(145+20mg/dl)、高血糖(465+67mg/dl)のラット各群(各n=5)に対して一過性脳虚血(1時間の中大脳動脈閉塞後再循環)を作った。各群に対して30分毎に6時間までT2強調画像と拡散強調画像を撮像し、その虚血領域の体積を比較検討した。 結果: 1.低血糖ラット群と正常血糖ラット群では拡散強調画像で虚血後30分から大脳基底核を中心に虚血領域を反映した高信号を認めた。その高信号は再循環開始後にはいったん縮小したが、その後時間経過とともにまた現れ、大脳基底核を中心とした高信号として描出された。大脳皮質の虚血領域は少なかった。低血糖ラット群と正常血糖ラット群で、虚血部の体積に有意な差は認めなかった。一方、T2強調画像では6時間後においても、はっきりした高信号として異常を現さなかった。 2.高血糖ラット群では拡散強調画像で虚血後30分から大脳基底核を中心とした高信号を認めた。再循環後は時間経過とともに高信号の虚血範囲はさらに頭頂葉皮質にまで及ぶ広範なものとなった。T2強調画像では3時間後から大脳基底核に淡い高信号が出始め、6時間後にはさらに頭頂葉皮質にまで及ぶ広範囲に高信号を認めた。 3.各ラット群で、TTC染色による梗塞範囲と拡散画像の高信号領域はよく一致した。 考察: 高血糖は一過性脳虚血(虚血後再循環)において、虚血を増悪する因子として働くことが確認された。これを臨床例に当てはめるなら、高血糖症例の塞栓性脳虚血に対し、線溶療法はかえって虚血範囲の増大につながり、危険かもしれないという推察ができる。
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