本研究では、ドーパミンD_4レセプターに高い親和性、選択性を持つ放射性ヨウ素標識リガンドを設計、合成し、簡便で高感度なラジオレセプターアッセイ法の開発を行うことを計画した。まず、D_4レセプターに選択的に結合することが知られているYM-43611:(S)-(+)-N-(1-benzyl-3-pyrrolidinyl)-5-chloro-4-[(cyclopropylcarbonyl)amino]-2-methoxybenzamideの化学構造に着目し、その構造-活性相関に関する検討から、ベンザミド核の5位に放射性ヨウ素を導入することとした。そこで、非放射性ヨウ素体を合成し、ドーパミンレセプターへの親和性について、D_2、D_3レセプターを個別に発現させたCHO細胞、並びにD_4レセプターを発現させたHEK293-EBNA細胞を用い、[^3H]-nemonaprideを放射性リガンドとする阻害実験により測定した。その結果、本化合物はD_4レセプターに高い親和性、選択性を示し、親和性では、現在臨床で用いられているクロザピンの約10倍、選択性でも、D_2比で約15倍、D_3比で約2倍となり、高感度ラジオレセプターアッセイに必要な基本的性質を有することがわかった。これより、放射性ヨウ素標識体を合成するため、まず、臭素前駆体を合成し、Melt法に基づくハロゲン交換反応を行った。その結果、放射化学的収率およそ85%、HPLC分取後の放射化学的純度およそ96%で目的物を得た。しかしながら、前駆体である臭素体との分離が悪く、この臭素体が同様にD_4レセプターに親和性を有することから、これについては他の方法を検討するとともに、脳組織を用いた、D_4レセプターの最大結合数の測定、病態による機能変化について検討する。
|