本研究では、ドーパミンD_4レセプターに高い親和性、選択性を持つ放射性ヨウ素標識リガンドを設計、合成し、簡便で、高感度なラジオレセプターアッセイ法の開発を行うことを計画した。まず、既知のリガンドとD_4レセプターとの構造-活性相関に関する検討に基づきYM-43611:(S)-(+)-N-(1-benzyl-3-pyrrolidinyl)-5-chloro-4-[(cyclopropylcarbonyl)amino]-2-methoxybenzamideのベンザミド核の5位に放射性ヨウ素を導入することとし、目的とする化合物の合成を行うとともに、D_4レセプターへの親和性、選択性について検討した。その結果、本化合物はD_4レセプターに高い親和性、選択性を示し、高感度ラジオレセプターアッセイに必要な基本的性質を有することを認めた。そこで、臭素前駆体を用いてハロゲン交換反応により放射性ヨウ素標識体を合成したところ、放射化学的収率およそ85%、HPLC分取後の放射化学的純度およそ96%で目的物を得た。これをddY系雄性マウスの尾静脈内に投与し、一定時間後に屠殺解剖して、放射能の体内分布を経時的に測定した結果、脳への高い移行性と脳内でのD_4レセプターの分布に応じた放射能の分布(線状体と小脳との放射能分布の比は1〜2時間後で4〜6.5)を確認した。以上から、本化合物は生体内、特に脳内でのドーパミンD_4レセプターの分布密度の測定を目的とした核医学診断の用途に有効であることが示された。今後、ラジオレセプターアッセイにより脳局所におけるD_4レセプターの分布密度を定量するとともに、これらの手法を用いて病態時、特に抗精神病薬を慢性投与した際の錐体外路系副作用の発現に関与するドーパミン神経機能について、レセプターのサブタイプ別に異常の有無を検討する予定である。
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