研究概要 |
^<201>Tlの生体内での動態はカリウムと類似しており、また細胞内への取り込みはNa/K ATPaseによるエネルギー依存性の能動輸送である。心臓核医学領域でグルコース・インスリンを^<201>Tlと同時投与し、冬眠心筋の発見に有用であったとの報告がある。今回、^<201>Tl腫瘍シンチグラフィにグルコース・インスリン負荷を行い、腫瘍への集積程度に変化が起こるか否かの基礎的検討を行った。 Wistar系ラットに移植したWalker-256実験腫瘍を用い、腫瘍径は20-25mmに達した時点で実験を行った。^<201>Tlシンチグラフィ施行時にグルコース・インスリンを^<201>TlClと同時に投与した群をグルコース・インスリン負荷群とし、グルコースのみ負荷した群、インスリンのみ負荷した群、生理食塩水を負荷したコントロール群として、シンチグラム上より腫瘍/健側比(T/N比)を求め、それぞれの群で比較検討した。グルコース・インスリン負荷群のT/N比は2.75±0.38、グルコース負荷群は2.22±0.63、インスリン負荷群は1.91±0.41、コントロール群は1.98±0.46となり、グルコース・インスリン負荷群は他の群と比べて有意に高値を示した。また、グルコース・インスリン負荷群はシンチグラム上他の群と比べてリング状の集積を示すことが多かった。従って以下の如く考察可能である。腫瘍細胞表面に存在するインスリン・レセプターをインスリンで刺激することで腫瘍細胞内への^<201>Tlの取り込みを強くすることが可能である。しかし、その時に重要な役割を果たすのがグルコースであり、グルコースとインスリンを同時に投与することで細胞内への取り込みが強くなり、インスリンのみでは取り込みは強くならない。さらに、グルコース・インスリンを投与することで腫瘍辺縁のviable cellの領域はより強い集積を示し,壊死部は低下する可能性が示唆された。
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