研究概要 |
これまでの検討結果より、脳内神経伝達物質生合成前駆体であるチロシン、ドーパの誘導体^<123>I-AMT、^<123>I-DOPAが、脳におけるアミノ酸膜輸送機能を選択的に測定し得る放射性診断薬として優れた性質を有することを明らかにし、^<123>I-DOPAに関しては部位選択的標識と品質管理の簡便化の観点から、固相化標識法を確立した(06770731,07770764)。更に、脳内神経終末に取り込まれたアミノ酸を神経伝達物質に変換する最終反応を掌る芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)活性測定を目的として、AADCの不可逆的阻害剤であるDFMTを標識原料に選択し、その^<125>I標識体の評価を行った。^<125>I-DFMTの脳スライスへの集積は、AADCの不可逆的阻害剤前処理により有意に低下し、^<125>I-DFMTの脳集積はAADC活性を反映すると考えられたが、アミノ酸輸送の盛んな脳や膵臓への特異的集積は認められなかった(08770750)。分配係数のpH依存性から、^<125>I-DFMTは生理的pHではアミノ基が十分に解離しておらず、結果としてアミノ酸膜輸送機構に対する親和性を失ったと考えられた。そこで、脂溶性による脳移行性の向上と酵素的変換を期待し、DFMTのメチルエステル体(FTM)をプロドラッグとして応用することを計画した。 FTMは合成により得た。^<125>I標識FTMは、簡便に高収率かつ高比放射能で得られ、精製の際、標識原料との分離を確認した。^<125>I-FTMは、予想通り高い脂溶性を示し、脳への移行性は顕著に改善した。^<125>I-FTMは体内において速やかに^<125>I-DFMTに変換されることが確認された。^<125>I-FTMの脳スライスへの集積は、^<125>I-DFMTと同様にAADC阻害剤の前処理により有意に低下し、^<125>I-FTMの脳への集積がAADC活性の指標になると考えられた。よって、^<123>I-FTMは脳内神経伝達物質生合成機能の画像診断薬として優れた性質を有するものと考えられた。
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