放射性薬剤の腫瘍内動態を解析するために、薬物動態に関わる主たる因子を統合したモデルを構築・改良した。考慮した因子は、1)グローバルな薬物動態による薬物の血中濃度の変化、2)腫瘍血管壁の透過性、3)腫瘍内の細胞間質における拡散、4)腫瘍細胞の膜表面における特異的な結合、5)腫瘍細胞での代謝による消失である。特異的な結合は、受容体との選択的な結合、あるいは細胞表面抗原との抗原抗体反応を想定したが、多価の結合あるいは結合体の細胞内取り込み、受容体の再利用の扱いは、まだ未解決である。これらの偏微分式による数学モデルはFortran言語で構築され、supercomputerで計算実行しているが、personal computerに移植を試みている。 モデルの検証として、腫瘍の微少結節を想定して、各種の悪性腫瘍で培養系によるspheroidの作成を試みている。現在まで、肺の腺癌、扁平上皮癌で効率よく作成できているが、他の癌細胞では作成困難なものが多い。次のステップとして、時間系列によるspheroid内の放射性薬剤の分布変化を観察するための実験系を模索中である。この系では、上記3)の拡散および4)の特異的な結合についての検証ができるが、1)の薬物動態、2)の血管壁の透過性、5)の代謝の関与は検証できず、動物実験を含めたより統合的な実験系の構築が必要とされる。補助金は主として細胞培養の消耗品の購入に当てられた。
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