シンクロトロン放射光を利用したX線像撮影として、1次元的放射光ビームスキャンと2次元検出器による電子スキャンを組み合わせた撮影法(「スキャニングスリット撮影」)を考案し、その基礎研究を行った。得られた成果を以下にまとめる。 1 模擬的な撮影システムの開発 X線管から発生した2次元的X線を鉛スリットとステージ機構を用いてビームスキャンを可能にした。被写体を透過したX線は、II(X線蛍光増倍管)、光学的に接合したテレビジョンカメラ(CCD)、および画像処理により電子スキャンを可能にした。これらの同調により、スキャニングスリット撮影のX線像撮影システムを開発した。 2 取得画像の評価 1で開発した撮影システムを用いて、画質評価と被曝線量評価を行った。その結果、いずれの評価においてもスキャニングスリット撮影法がグリッドを用いた面撮影法と同等か、それ以上の良好な成績を示した。 3 散乱線除去率の算出 スキャニングスリット撮影による散乱線除去率は、モンテカルロ計算法を用いて算出した。その結果、1次元的放射光ビーム幅と2次元検出器側の電子スリット幅を狭小化し同調スキャンを行うことにより、散乱線が低減できることを示した。 4 放射光を用いた撮影 高エネルギー加速器研究機構放射光実験施設にあるトリスタン蓄積リングの偏向電磁石から得られる放射光を利用してファントムの撮影を行った。1次元的放射光ビームスキャンについては分光結晶格子面の角度を変えることで、電子スキャンについては画像処理で模擬した。その結果、1次元的放射光ビーム幅と電子スリット幅を狭小化するほど画像が改善した。これらより、本撮影法がシンクロトロン放射光を利用したX線像撮影に有用な方法であることを示した。
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